2019年度経済理論学会第67回大会              10月19日(土)‐20(日) 駒澤大学(駒沢キャンパス)

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大会案内とプログラム
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経済理論学会第67回大会の共通論題は、「資本主義のオルタナティブ―資本主義の限界と政治経済学の課題」です。

 

 2019年1月26日に開催された幹事会の討議を経て、本年度の大会の共通論題は「資本主義のオルタナティブー資本主義の限界と政治経済学の課題」としました。

 

 「経済学(ポリティカル・エコノミー)の総合学会」であり、とりわけ「マルクス経済学を、現代における経済学のもろもろの流れの基幹的な部分として位置づける」本学会は、本年、創立60周年を迎えます。これまで本学会は、「資本主義批判および経済学批判の精神」を継承しながら、直面する資本主義の諸問題を解明すべく、基礎理論から現状分析まで対象を広げ、発展をとげてきました。「金融危機」や「グローバリゼーション」、「階級分析」など、現代の資本主義の分析を通して、今日、マルクスの経済理論は現実の諸課題に対する分析枠組みとしての力をますます発揮しています。

 

 本大会では、これまでの60年間の成果の蓄積を生かしつつ、近年直面してきた諸問題がいよいよ資本主義のシステムとしての「行き詰まり」を示しているという視点から、限界に近づいたともいえる現在の資本主義とそのオルタナティブをテーマにとりあげます。周知のように、戦後日本資本主義は高度経済成長期、いわゆる安定成長期をへて急速な経済発展をとげました。ところが日本経済は「失われた30年」あるいは「長期停滞」といわれるように、バブルが崩壊した91年から2018年の経済成長率の平均値はわずか1.0%程度にすぎません。本質的に利潤最大化・経済成長を目的とした社会システムである資本主義が「行き詰まり」をむかえているのです。こうした90年代以降の日本経済が経験してきた過程は東西冷戦終結後のグローバリゼーションの進行、深化の過程と重なります。この間に世界経済は、新興国の急速な経済発展による新たな国際分業を展開するとともに、いわゆる「マネー資本主義」の膨張、深刻さを増す地球環境問題、資源・エネルギー問題等の解決が待ったなしの状況に陥っています。

 

こうした世界的に複雑な問題を抱えた経済的条件を新たに生み出し、利用しつつ、なおも資本主義は一層の経済成長、利潤最大化を追求してきました。日本を見れば、生産拠点の海外移転とともに、規制緩和を伴う非正規雇用の拡大による人件費の削減や長時間労働、あるいはキャピタルゲインを目的とした金融投機などによって、さらなる利潤拡大がはかられてきました。一部の大企業が膨大な利益を得る一方で、大部分の国民生活や労働環境は疲弊をきわめ、社会は閉塞感につつまれています。一部に富が集中し、かつて中間層といわれていた人びとの生活は劣化し、多くの人びとは未来に展望をもてずにいます。アメリカやEUなどの先進諸国でもなおさらのこと、格差の高まりとともに、国内的にも対外的にも対立や分断が深まっています。現在の資本主義は、経済成長や利益の追求がかえって人びとの生活の疲弊や対立を拡大させる状況にいたっています。トランプ米大統領の登場、ブレグジット、フランスでの暴動、米中貿易「戦争」等、ここにきて世界的規模での秩序の大転換がはじまるかのようです。まさに今日の資本主義は岐路に立たされているのです。

 

 

では、このような行き詰まった現状は、現代の政治経済学(ポリティカル・エコノミー)になにを要請しているのでしょうか。このようなときにこそ、現在の資本主義の歴史的位置をとらえたうえで、資本主義のなかに次の社会の萌芽があるというマルクスの視点が必要ではないでしょうか。高度に発展してきた生産力を全人類のために正しく生かしていくにはどのような道筋をつけていけばよいのか。これを考えることは、とくに東日本大震災・福島原発の事故を経験し、被災された地元の方々の困難とそれを工夫しながら乗り越えようする姿を目の当たりにしているわたしたちの責務だとも思われます。つまり資本主義のオルタナティブを視野にいれた議論が求められているように思われます。また、資本主義経済の矛盾やその展望を含めたアプローチができることは、本学会の強みでもあります。そこで本大会のテーマを「資本主義のオルタナティブー資本主義の限界と政治経済学の課題」といたしました。自薦、他薦を問わず、積極的にご推薦をお寄せいただきますようお願い申し上げます。

 

                                    第67回大会準備委員会委員長  姉歯 曉